遺贈について

まさ福祉行政書士事務所の中村です。

「相続」「遺贈」の違いについて説明いたします。

「相続」とは、法的に指定された親族に対し、財産が引き継がれることをいい

「遺贈」は、被相続人(遺言者)が指定した人に対し、財産を引き継がれることをいいます。

「遺贈」には

特定のものを指定する「特定遺贈」

全財産の配分割合を指定する「包括遺贈」があります。

「遺贈」は、民法986条で「いつでも遺贈の放棄をすることができる」と明記されていますが、

これは、「特定遺贈」のみに適用します。

ただ、相続においては、財産の移転等を行う必要がある時は、いつまでも、放棄するか否かの確答を待っているわけにはいきません。そこで、民法987条では、遺贈義務者(遺贈の履行をする義務を負うもの【財産を引き渡す相続人等のイメージ】)が、受遺者に対し、相当の期間を定めて、受遺者(財産を得る予定の者)遺贈の承認又は放棄すべき旨の催告をすることができ、受遺者が意思を表示しないときは、遺贈を承認したものとみなされます。

「包括遺贈」は、相続同様、相続人と同一の権利義務を有することになるために、放棄をする期間が定められ(知ったときから3か月)、また遺産分割協議にも参加しなければなりません。

では、遺贈に関し、もう少し深堀していきます。

受遺者の担保請求権(991条)

受遺者は、遺贈(特定遺贈)が弁済期(もらう時)に至らない間は、遺贈義務者に対して、相当の担保(人的(保証人を立てさせる等又は物的担保(抵当権設定等)を請求できます。停止条件(物事が成就した時)付の遺贈について、その条件の成否が未定である間も同様です。

停止条件付(条件が成就した場合【成就は不確定】)始期(確実に到来)付きの遺贈の場合に、遺贈義務者に対して、担保を請求できる条件です。担保の種類に制限はなく、弁済期が遺言の効力発生時より後になる場合に、遺贈義務者が無資力化する恐れがあるため、受遺者を特に保護する趣旨で、この規定が設けられています。

(例)「子どもが20歳になったら、500万円をあげる」という始期(確実に到来する時期)付き遺贈が付いている場合は、弁済期がくるまで、担保を請求できます。

受遺者の果実取得権(992条)

受遺者は、「遺贈の履行を請求することができる時(遺贈者の死亡時)」から果実を取得する(天然果実【リンゴ、牛乳など】、法定果実【地代、家賃など】)。⇒遺贈義務者に対して、引渡し請求ができます。

⇒ただ、現に果実が生じていることが要件であり、遺贈義務者は、生じていない時は、見合う価値を引き渡す必要がありません。

遺贈義務者による費用の償還請求(993条)

遺言者の死亡後に遺贈の目的物について、必要費(家屋の修繕費用や公租公課等)を支出した時は、民法299条(留置権の費用請求)を準用する⇒支出した費用を返してもらうまでは、目的物を引き渡さないことができます。

・有益費の場合、遺贈義務者は、遺贈の目的物について、有益費を支出した時は、価格の増加が現存する場合に限り、受遺者の選択に従い、その支出した金額または、増価額を償還請求することができます(993条1項による299条2項の準用)。ただ、遺贈義務者は、有益費の償還がされなくても、遺贈義務を履行しなければなりません。

また、果実を収取するために支出した必要費も、果実の価格を超えない限度で、償還請求(返してよ~)ができます。

受遺者の死亡による遺贈の失効(994条)

遺言者より、受遺者が先に亡くなった時は、遺贈は効力を生じません。また、停止条件付遺贈(○○したら遺贈する)も条件成就前に受遺者が亡くなった場合も効力を生じません。

⇒効力を生じない又は、放棄によって効力を失ったときは、相続人に帰属します。

遺贈義務者の引き渡し義務(998条)

遺贈義務者は、遺贈目的である物又は権利を相続開始の時(不特定物の特定遺贈の場合は、遺贈義務者が目的物を特定した時)の状態で引渡し、移転する義務を負います(民法551条贈与者の引き渡し義務と同じ)

遺贈寄付について

「残った財産で社会に貢献したい」

「未来の人たちに何かを遺したい」 などの気持ちで、「医療」「福祉」「教育」「海外支援」「文化継承」等で、社会貢献団体への遺贈寄付も行われています。相続寄付、遺贈寄付は、相続税申告前に、法人へ寄付をした場合は、寄付相当額は相続税の対象にはなりません。

相続人への遺贈の使用

配偶者居住権を遺言書で明記する場合は、「相続」ではなく、「遺贈」と明記します。理由としては、仮に配偶者が残された家を、相続したくないと放棄の意思がある場合、「相続」と書いてしまうと、他の財産もすべて放棄しなくてはならなくなります。「遺贈」にしておくことで、その他の財産を放棄する必要は無くなり、自宅のみを受け継がないという選択肢が生まれます

以上が遺贈に関するお話です。ご不明な点がありましたら、遠慮なくご相談ください。最後までご覧いただき、ありがとうございました。

コメント