配偶者短期居住権について

行政書士

みなさんこんにちは。まさ福祉行政書士事務所の中村です。

2019年に施行された改正相続法において、配偶者居住権が創設されました。
本日は、その中で配偶者短期居住権(民法1037条)についてお話します。

配偶者短期居住権の制度が創設される前は、当事者の合理的意思解釈※1に基づき、
相続開始時から遺産分割時までの使用貸借※2が成立したものと解釈することで、
配偶者の保護の居住を保護して来ました。

※1合理的意思解釈とは
→「意思表示の内容が一義的に明らかではない場合には、その表示内容(契約内容)を客観的な事実から合理的に確定させる」こと。うーん(゜゜)難しい・・・

※2使用貸借(593条)とは
→借主が貸主から目的物を無償で借りて使用収益し、後にその目的物を貸主に返還する契約をいう。使用貸借による対価が発生しない所は、賃貸借契約と違うところです。

しかし、今までは、あくまでも個々の事案で認められるものであり、保護が不安定な状態でした。
また、被相続人が居住建物を、第三者に遺贈した場合には、配偶者に居住を継続する
必要性があったとしても退去しなければならなかったのです。

そこで配偶者が、
1,被相続人の財産に属した建物に
2,相続開始の時に無償で居住していたという場合に限り
一定の期間当然に居住の権利を取得することが定められました(民法1037条1項)

配偶者短期居住権の存続期間(配偶者がいることのできる期間)は
1.遺産分割の結果、居住建物の帰属(その人の所有となること)が確定した日、
または相続開始の時から6ケ月を経過する日のいずれか遅い日
2.居住建物の取得者が配偶者短期居住権の消滅を申し入れをした日から6か月を経過する日 です

この権利を取得した配偶者は、建物の居住を継続することができ、居住建物取得者は配偶者による 居住建物の使用を妨害する行為をしてはならないとされています(民法1037条2項)。
つまり、取得者が存在しても、配偶者が権利を取得していれば、一定期間居住できる(追い出されない)ことになります。

しかし、配偶者は、善管注意義務(※3)を持って使用しなければならず、居住建物の所有者の
承諾を得なければ、原則居住建物を第三者に使用させることができず、配偶者が原則として
居住建物を第三者に賃貸して賃料取得することなどをすることは認められません。

※3善管注意義務とは
善良な管理者の注意義務→社会通念上あるいは客観的に見て、
当然要求される注意を払う義務のこと

配偶者短期居住権の消滅事由は以下の通りです。
1,民法1037条1項で定めた期間の経過(6か月がキーワード)
2,配偶者居住権を取得したとき(配偶者短期居住権を取得している意味がない)
配偶者居住権については、後日ブログに掲載します。
3,相続人としての地位を失ったとき(相続排除、相続欠格等)
4,建物仕様に関して負担する義務に違反したとき。

配偶者短期居住権により、配偶者が突然家から追い出されることがなくなり、
それまでに次の行き先を時間に余裕を持ちながら検討できることは、
配偶者の権利擁護を考えると、とても大きな法改正と考えます。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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